岸辺のAlbum

teenstの日記

斉藤和義と音楽の力

政治的な内容っぽい感じがするが,音楽についての話をする.
僕は幼少期,ポンキッキーズが好きで毎日見ていたくらいで,
斉藤和義さんの音楽は好きだと思っていた

4月くらいだったか,彼の「ずっと好きだった」の替え歌がYoutubeにアップロードされたときは,グッとこないけど,まぁいいかくらいにしか思ってなくて.

行く前に以下のような文章を書いていて,まぁこういう感じのことを考えていて.

地震をネタにMCする人たちの音楽は,個人的に聞きたくない.表現の世界なのでそういうものと親和性が高いのはわかってるつもりだし,それに影響されてできる音楽もあるだろう.だけど僕はそういう音楽を「言葉」で説明されるのは嫌だし,それをネタにしんみりするのも嫌だ.でも,あぁいう夏フェスというものはそういうも取り込んじゃうっていう性質があるものだと思ってて,どこかで絶対地震の話を聞いてしまいそうな気がして怖い.

去年RSRに行ってよかった理由と今年行きたくない理由 - teensの日記

実際は地震ではなく,原発の話だったということ.

たまたまRSR2011で,斉藤和義に行くことになったため,1時間前くらいからステージ前にはいたのだけれど,寒くもなったしキャンプ地に上着を取りに帰ったり,トイレに行ったりしてその辺をぶらりとしようと思った.

帰還してたときには人がかなりいて,人気なんだなぁなんて思いつつ,なんか彼の歌からはイケメンな感じがして,なるほど僕とは相容れないところもあるなぁと思ったところで,「ずっと好きだった」からの「ずっとウソだった」.

本物を聞いて,嫌になった.
糞だなって思ったし,それを喜んでる観客に対しても嫌悪感.
苛立ちを抑えるためにこの場から逃げ出さないといけないなと思った.


そんなこともあってその後,彼が出るステージは精神衛生のために避けた.
いろいろと考えてみた結果,インターネットやステージの上でやったことに対しては凄いなって思うけど,主張している内容やその表現の仕方に対してはあまり賛同できない.
なんというか,彼の歌をそのまま素直に受け入れてしまうのは,弘兼憲史のCMで納得してしまうのに似ている気がして.検証可能性が怪しい感じがする,むしろそれ以下かもしれない.いや,非難するなということではなくて,歌詞が純粋に怪しいと感じてしまったのだ.*1

Youtubeで見たときは,なんとも思わなかったのに,
本物を直に聞いたときはかなり影響されてしまって,
やはりライブは生だなと思ってしまった.*2


僕はこーゆー歴史には疎いので,以下に書くことは想像の域を超えないのだけれど,
CDやレコードが存在する以前は,こうやって生の音楽を聴いて,
それでもっていいものは評価されて,悪いものは見向きもされなかったのだろうなぁというような,
たぶん当たり前の人には当たり前すぎることを考えていて.
いつからモノの売上で良し悪しが図られるようになって,その後いつどのような過程でそのシステムが崩壊する(した)のかとか考えていた.

僕らはフェスのアーティストリストを見て,Youtubeで"予習"してシークバーをいじりつつ日々の作業をこなしているのだけれど,クリックひとつでシークバーを弄り曲の起承転結を探ったり,好きなアーティストをまとめたりすることができる.好きな音楽なら繰り返し聞くこともできる.また物理的にその場を離れなくても,command+wで画面を消すことが可能.
しかし,当日眼の前にいるアーティストをcommand+wで消したりすることはできないし.演奏は一度きりなのだ.繰り返しはできない.
それなりにインターネットに毒されてるなぁと思いつつ,あの時はその場を物理的に離れた.*3


「ずっとウソだった」という替え歌については菊地成孔氏のコラムが秀逸すぎると個人的には考えていて.

つまり勝ちに行こうとする限りにおいて、ですが、もの凄く難しく、衝動任せに替え歌を作る事では、かなり難しいのではないかと思います。

 というか話はむしろ逆で、何かを撃つ本質的な言葉の力において、わざわざこうして中指を突き立てた替え歌を作らずとも、斉藤和義さんには「歩いて帰ろう」というとてもステキな曲がありまして、これ<ポンキッキーズ>という児童向け番組の(確か)挿入歌ですが、老婆心ながら申し上げるならば、これをそのまま、まったくいじらずに歌った方が、現状に対する、痛烈な批評として、「ずっとウソだった」より、遥かに強い力を発揮したのに。と思うばかりですね。

「歩いて帰ろう」のがよくね?

なんてのはなるほどなぁと思っていた.

RSRで起きた僕の中でのこの騒動は,事故のようなもので,やがて許せるのだろうなとも思うけど,今回は運が悪かった.また許せる日を楽しみにしている.


唯一悪かったと思うのは,その場から逃げ出したばっかりに,数回置き去りにしてしまった同行者に対してであって,その後も気を遣わせてしまったのが申し訳なかったと思う.ごめんなさい.*4

*1:なんというか大企業群や大きな組織は,自己の利益や体面を守るのはもうどうしようもない気さえしていて,その背景などを考慮せずに一極集中して非難するのはどうも最近の僕にはしっくりこない.

*2:「ライブも、ビールも、やっぱ生だろ」というサッポロビールのコピーが会場内にあったと思う

*3:嫌なら見なければいい,というのはネットでしか通用しないのだろうか

*4:反面,聴きたい音楽を聴けばいいのではと思っていたところもあったので,そういう行動は取りやすかったのだが