岸辺のAlbum

teenstの日記

女友だちを作ろう

男友だちを作ろう

男友だちを作ろう

山崎ナオコーラ,2冊目のエッセイ.
数回の連載をまとめたもののよう.
『指先からソーダ』とは方向性が違い,対談集のようなもの.
僕の日記も形式としては似ているのだけれど,
このエッセイは括弧を使って相手と筆者の発言を切り取っていること.
連載が終わりになればなるほどその傾向が高くなる.
あとがきで著者は,初期のころは自身に悩んでいたというようなことを書いていたが,
むしろ著者が発言を通してどういう感情を持っていたかということに興味があったので,
ずっとその方向だったらよかったのにと,勝手な感想を持ったりした.

登場人物はそれなりに多様.
男女問わず,友だちとの雑談なんて楽しいものだし,
女性は特に友人との会話がストレスの発散になるという自覚があるようで,
なるほどと思う.

僕がそれなりの男社会にいるのに,雑談に寛容であり実践しているのは*1
自分の中の女性性の現れじゃないかなぁと思う.
ビジネスのやり方としての接待とかは得意じゃないし,おもてなしも苦手.
たまに「答えを見つけることが相談する理由じゃないし,お前の指摘は尖すぎる」と異性に言われてしまうこともあったりするのだけれど,
反面,「ふわふわしていて,抽象的だし的確でもない」なんて同性には言われて,
それでは「中性的」と言われるようなタイプかというとそうでもないし,「俺はいったいどうすれば……」という気持ちになることも多い.


そういえば,僕は女装して人を笑わせるということを幼少期から憎んでいて,
中学生の頃,なにかの催しで「女装をしてステージに立ち盛り上げよう」とか言い出したクラスのリーダー的な人に,
「それはあかんやろ」とか言い,また喧嘩になったことがある.

思えば小学生の時までに,親や親戚に女装をさせられたり,
学芸会でもそういう格好をさせられて,バカにされた(と僕は思い込んでいた)ことがトラウマになっているというのがあったようで,
かなり反発していたのだと思う.
「性別を変える格好をして笑いを取ることは芸じゃない*2」ということも思っていたと思う.
確実な記憶はないので記憶違いかも知れないけれど,伝え方や表現の仕方が悪かったのか,「トラウマがある」という事実だけは教員に伝わって,
教員に「それでももてなそう,盛り上げようと人が頑張っているのに,集団と違う意見をいうのはよくないよ」みたいなことを言われたことだけは残っていて,

教諭,スタート地点の質の担保は学士と教員免許,加えて教員採用試験くらいしかないので,
今となれば気づくこととして,基礎レベルが保証されているだけで高品位な人材の担保がされているわけではないのに,
それでも子供ばかりの環境での大人というだけで特別視していたところがあるのだろう.
絶対的に正しいとは思ってなかったけれど,「まず間違ってないんじゃないかなぁ」とかは無意識に思っていた気がする.
当時はトラブルも起こしたわけだし,大げさに反論もせずに受け取っていたように記憶している.*3


結局この話ができるまで10年くらいかかってしまったわけで,
親や親族のエゴは業が深いなと思うし,
親や親族のエゴは業が深いといえば,ソーシャルメディアに放流される親が撮った子供の写真(Twitterのアイコンにしている親もいるが)についても,
微笑ましいことだと思う反面,このままでよいのかとも思うわけで*4
親権者なのだから子供の肖像権は自由にしてもいいのだろうか.なんてかなり面倒くさい,しかしスナップ写真の撮影を趣味にしていた人間なら当然思い至るようなことについて考えているわけである.
子供の時のことを思い出したくないと言う大人はそれなりに見かけるのに,子供の同意も得ずに身勝手だなと思う.それとも子育てはそれだけ大変なのだから,親に許される権利なのだろうか.
「人の気持ちがわかってるのか」と言われ続けた幼少期を過ごした僕にとっては,結構敏感になるポイントであり,
家裁にキラキラネームの改名申請をすることのように,カジュアルな社会問題になるのか.興味深いのである.
こういうちょっとしたトラウマを超えて人間は強くなっていくのだろうか.

話を戻すと,男の僕が「女子会が〜」などと言っていたことも,
実はジェンダー,というか社会的な性別の役割分担と適応に関することが積み重なって,
行動様式につながっていったのだろうなと思っている.
なので,男女観の友情はあるかないかなんてことは,0と1とでわけられるようなそんなに単純じゃないんだよななんて思う.ということを読みながら思った.*5

webちくま「山崎ナオコーラ『男友だちを作ろう』刊行記念対談」
ウェブにも対談があり,
僕も異性の友だちがほしいと書いていたことを思い出す.


現代アートを買おう! (集英社新書)

現代アートを買おう! (集英社新書)

2冊目も,促し系のタイトル.
『男友だちを作ろう』は著者の行動の話だけれど.
こちらは読者に行動を促すもの.

美術については勉強不足であるが,
昨日見た展覧会の経済的な視点がやたら印象に残っていたので,手にとったのだった.


まぁ買えなくはないけど,いいものをたくさん買うのはやっぱり難しそうだなぁ.
友人の美術作家の作品も直接買うことはできるのだろうけれど,
どうせならば自分が本当にいいと思ったものを,直接見てから買いたいかなぁと思う.

*1:ストレス発散の調査結果のGRAPHを見たことがあるけど男性と女性でストレス発散の方法が違い,明らかに差異が見えたのは「雑談」という項目だった

*2:しかし今では「ドラァグクィーンのシップシンクは芸の中でもそれなりのものの一つだよなぁ」なんて思ってるので,単なる女装に訓練がないことが嫌悪感の原因だったのだろうか

*3:その後,高校時代から徐々に疑いを持ち始めて,それでも素晴らしい人が中にはたくさんいるということに気づけたのも良かった.

*4:僕自身,写真を撮り始めるまで,写真に映ることにかなり抵抗があった

*5:ここに至るまでが長かったナァ