岸辺のAlbum

teenstの日記

『イシューからはじめよ』読んだ

「バリュー」って言葉が出たら,反射的にマッキンゼー関係者だと認識するようになるくらいには,
ビジネス書にも近づきつつある今日この頃です.



「イシューからはじめよ」を読んだ - $shibayu36->blog;


@さんがこれ読んでて,
なんかタイトル見たことあるけど,よく知らなかったので図書館で借りて読んだ.

技術書読んでるで感覚で手にとったら(テーマに対して厚いので)びっくりするけど,
行間の空白多いし,欄外の空白多いので,新書一冊くらいの分量の印象.
最初に5分間だけ計測して20ページくらい読めたので,僕の場合はだいたい2時間前後くらいで読み通せる感じだった.


@shiba_yu36さんのブログ記事は,この本の最初の部分の肝心な部分に焦点を当ててる感じで,
後ろの章まで読み進めると具体的にどういう感じで,仕事とかを進めるかみたいなのが書いてある.
図も適切に使ってあってわかりやすい.


序章(p33)に

月曜日から金曜日までの5日間で、あるテーマについてまとめる必要があるとする。すると、よくこんなことが起こらないだろうか?


月曜......やりかたがわからず途方にくれる
火曜......まだ途方にくれている
水曜......ひとまず役立ちそうな情報・資料をかき集める
木曜......引き続きかき集める
金曜......山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる

と書いてあって,「これはまるで先週の俺では?!」という気になった*1し,
こういう体験は学生時代に思い出せないほどあったし,
「何も考えずにビジネスや研究を行」った結果だよなぁと思う.

そういう体験をきちんと問題として捉えて,
成功体験や失敗体験からうまく一般化して回すのができるのが優秀の一つの要素だと思えるけど,
残念ながら「失敗の匂い」は嗅げるようになったけど,その先がまだまだなので読み進めようという気になった.
そう,この本を読んでいて面白くて止まらない状態になったのは,最初のほうよりも
後ろのどうやって課題に取り組むかというプロセスのほうだった.




読み終わった後にオモシロイと思ったのは,著者は一心不乱に大量に仕事をすることを「犬の道」と表現していて,
これはやるべきではなく,最初に問題を見据えてやることで良い結果が出せるみたいなことを書いてる.


今日眺めたツイートに,


というのがあって,
これは特徴的な単語だけを抽出して話を組み立てると,「犬の道」とは真逆のことを言ってるように思える.
僕もそして僕の周りの新参者の人も,研究室にいた時はトップカンファレンスの論文を100本読めとか,
よく回数をこなせと言われてるし,
例えばコピーライターとかが新人の頃は「一日100本書け」みたいなことをやるというのもこっち側っぽいので,
今は(も?)これを意識している.


成果を出してるインテリの人が真逆のことを言ってるってことはないって思ってるので,
自分なりに考えてみたんだけど,
立ち位置や前提条件が違うのかなぁと思った.


例えば,コンサルファームに就職するような人は,問題解決の能力(スピードだったり着眼点だったり)が格段に高い(はずな)ので,
こういう「ただ考えずにやるだけではだめだよ」と考え方を与えるだけでわりとうまくいくのだろうか.

例えば,ITエンジニアが好きな「知の高速道路」というのも,
周囲からバリューとは何かというのを自然に与えられるという点で,前提条件が違うという見方ができる.


例えば,論文を100本読めというのは,情報系であればなにもワークショップの論文や日本語で書かれたものではなく,
トップカンファレンスに通ったもの*2みたいなのに絞ってるわけで,
これはこの本でいうところの「イシュー度」の高い仕事の博覧会みたいなものなので,
前提条件が全くの素人状態ではない*3ということがあるだろうと思う.


しかし,その辺は誤解されやすい上に,誰にでも効く完璧なアドバイスはないように思う.
完璧なアドバイスという話をすると,先週見たこの話が思い出される.

「ドラゴン桜」が書かない本当の日本の底辺 : 人類応援ブログ


『イシューからはじめよ』を読める能力があることも,ある程度の能力の前提条件だし,
こういうふうに話を蛇行させながらも自分の体験と絡めて話が書けるってのも能力だと思う.
しかし,今この記事を書いていて,改めて本を見なおしたりしてると,
僕が読書に費やした2時間だけでは情報の欠損があることはやっぱりわかるし,
2時間で脳内で要約することができないことや,
実際の仕事に100%活かすことはまず今の僕にはムリだろうなとも思う.
その辺は僕の前提条件にはならない.

しばしば「何もしないよりはマシ」と言って,行動することの重要性をやたら言う人がいるのだけれど,
(1サイクル回してない自分がこういうことを言うのはアレだとも思うし,個人的には1サイクル早いところ回したいという気持ちが強いのであまり自分では必要以上に意識しないし押し殺してるけど)
実際は知的生産の活動であれば,何かしてしまってマズい方向に進んでしまったり,
時間を浪費することが実は悪なのではないかなと思う.
でも「何もしないよりはマシ」→しかしあまりに糞な行動はしないというのは実は前提条件になっていて,
ただそれ以前の考えや議論が未定義や説明不足なために,聞こえのいい「何もしないよりはマシ」という言葉だけが生き残るというのもあるのかもしれない.

そしてそうやって残っていた「何もしないよりはマシ」という言葉が,その世界で幅を利かせてるうちは,
まだまだ根性論が通用してしまう世界なのかなと思ったりもしている.


話は変わって自分のことに引き寄せると,
今やってるお仕事の面白いところは,自分が一番目のユーザであるということで,
だからこそ「自分がこうだったらいいのになぁ」と思うことは大切にしつつも,
あまりに個人的なところに行き過ぎると何も一般化出来ないということなので,
ある程度は大局的に見ることが求められてるということだったりしている.
まだ大成はしてないし,失敗する可能性ももちろんあるんだけれど,
「出る前に負ける事考えるバカいるかよ」と猪木も言ってる*4ので,
勝つつもりでやってるわけですね.
勝つつもりなら勝つつもりの行動があるわけで,*5
まぁその行動指針を得るために上記の本を読んだら意外と良かったということでした.


こういう感じで,与えられた仕事の分量が多いのだけれど,
バリューについて悩むことは,手を止めてもいいことの言い訳にはならないし,
きちんと考えつつやっていくというの,苦手な気がするけど,うまくやれたらなぁと思う.

*1:技術系のお仕事だから一応出力はあるのだけれど,バリューはないとみなしていいし,これに等しい

*2:例えば,CGなら言わずと知れたSIGGRAPHだし,自分が知ってるだけでも自然言語処理ならACL機械学習ならNIPS,人工知能系ならAAAI,WebならWWW,ソフトウェア工学ならICSEみたいな感じで,まぁその分野の人と話してたらトップカンファレンスisココみたいな情報は得れるし,ググれば出てくる

*3:よく研究室の勉強会では「この論文は......」と先生方やDの方がネガティブな感想を仰っていたこともあったけど,着眼点が悪いことよりも解き方が悪いことについての指摘が多かったように記憶している

*4:ちなみにこの試合は猪木は勝ってる

*5:勝つつもりというと,例えば今の所属の入社試験は唯一勝つつもりでやったので,見事落ちなかったというのがある.珍しく成功体験っぽい.